- 村松弘治さん(安井建築設計事務所 設計部)
- BIMの活用ー独創的発想で高い品質の建築をつくる
環境シュミレーションについては、次の発表にもあるように、大手設計事務所では標準なのかと・・驚く。
「実施設計」での利用の仕方が、まずもって難しく興味あるところであるが、3Dもモデルから、図面の作成はもちろんであるが、「面積表、建具表、仕上表」等のリスト・表関係も抽出しているレベルのようだ。また、私などは、住宅レベルの規模の実験で終わっていつが、大規模庁舎設計での利用であるから、おそれいった。このように大規模なものになると、「面積表、建具表、仕上表」等のリスト・表関係との整合性は、設計実務者ならいままでの苦労は想像がつくのであるが、その整合性の高さを強調されていたように思う。官公庁設計においては、特に重要視されよう。BIM利用にも設計事務所の特徴が現れる。
ただ、利用率を見ると、東京事務所で「計画75%、基本設計50%、実施30%」とのことで・・・、これをどう見る?設計見積・数量調書については、報告されておらずまだな用である。
ちなみに、
『私の場合、BIM利用率「計画100%、基本設計100%、実施100%」・設計見積・数量調書も作成!』建築住宅3D・BIM設計innovation/高橋建築研究所
また、大手事務所の課題・重要性として「レギュレーション・スタンダード・スキル」をあげていたのが注目される。組織事務所のあってはBIM利用の標準利用方法の決定と、運用が有用なところであろう。
今後の課題は「意匠・構造・設備の連携」「広く創造的アイディアを導く」「都市環境設計への活用」をあげている。「施工、ファシリティーマネージメントへの展開」もあげているが、リスト・表関係の活用にとどまっている模様で、「コストの展開」も上げているが、その活用については具体的提案はなされていなかった。
- 永瀬修さん(日建設計 設備設計部門環境計画室)
- BIMと環境シュミレーションの現状
私の情報では、日建設計では、グループごとにCAD利用の運用が任されており、利用の程度・運用CADソフトも統一的には利用していない模様である。ただし、グループによってはBIMの先端グループもあるようであるが、今回の報告にはもりこまれていなかった。
中規模事務所の室内換気空調シュミレーションも3Dで行っている様であるから、利用頻度も高いのではないかと思う。シュミレーションも身近なものになったと驚くばかりである。
ただ、建築の3Dモデルがないときは設備で作らなければならないし、建築のBIMモデルがあったとしてもモデル精度が高すぎ、これも3Dモデルの作り直しがあるなど、課題もあるようである。
地域開発用のシュミレーションは、多彩なようで、風速・温度シュミレーション、さらにCO2シュミレーションと多彩で、驚いた。
- 綱川隆司さん(前田建設工業 建築設計部 建築設計グループ 3D・シームレスチームリーダー)
- 設計施工におけるBIM活用の現在と課題
こちらはBentleyの支援も全面的に受け、全社的に利用している。というのは織り込み済みであった。
ただ、発表で自社の高層ビルBIMモデルを実際にPCで動かし、ウォークインスルーでプレゼンテーションしているのには、驚く。こちらは、設計から、実施設計まで、ほぼ全社的な取り組みであろう。
ただ、実際の設計生産性を問われると、基本実施段階での設計生産性が向上したのではなく、BIMデータを利用した施工図段階での設計図生産性の向上で、設計行為全体のバランスを補っているように、説明からは感じ取れた。
また、見積書作成については、言及されておらず、まだ、実施率はまだら模様なのであろうか
それと、使用BIMソフトであるが、Bentley製品を全面使用かと思えばそうでもないようで、autodsk-Rvit、graphisoft-archicadの混在模様?のようだ。
- 伊藤正比呂さん(大成建設 建築本部技術部技術計画部 建築生産システム推進担当)
- 建設現場におけるBIM活用の現状と課題
この10年の大きな物件から遠ざかっているので、やっぱり遅れてるのかな?・・なんて。
でも、逆に考えると、3D・BIMはむしろ現場で威力を発揮するということかもしれない。その理由は、「設計と違い結局細部詳細まで決定する必要があること」「設計教育になじみが薄い現場の担当者・職人は、むしろ立体で見たほうがやっぱり理解しやすく間違いて戻りがないこと」「設計が決まっているので3D・BIMモデル入力が楽なこと」「立体のほうが出来高・工程管理に有効なこと」などがあげれれるとおもいます。・・どうですか?こういう考え方は・・。
- 田部井明さん(竹中工務店)
- IPDとCPD
- BIMを利用した統合化
- フロントローディング
- リスク・成果の共有
- コラボレーション
- 20%プロジェクトコストを抑制
- 25%早い進捗
- 35%安全性を改善
- 30%生産力を向上
- 多くの品質改善
- 競争優位
ところで、この「BIMの導入し、プロジェクトの全体に渡り合理化を図るシステム」をAIA(米国建築家協会)は、2005年5月にIP(Integrated Practice 業務統合)と名づけ、2007年12月には、Integrated Project Delivery (IPD、統合プロジェクト推進法)として、第4の契約方式Integrated Project Delivery: A Guide (IPD契約書)を紹介したとしている。つまりAIA(米国建築家協会)の契約方式は、
- 入札方式 Design-Bit-Build
- CM方式 Construction Manager at Risk
- デザインビルド方式 Design-Build
- IPD方式 Integrated Project Delivery
以上の4つであるとのこと。しかし、このAIA・IPD方式の前に、ConsensusDOCSが、IPD用の契約書を発表している。
- 「ConsensusDOCS 300:Standard Form of Tri-Party Agreement for Collaborative Project Delivery」(CPD契約書:共同プロジェクト推進法関係三者契約標準方式)
IPD契約書もCPD契約書も内容的には、ほぼ同じのようであるが、・・IPD契約書では、GMP(最大保障価格)のSEP(目的会社方式)いずれか選択?や、CPD契約書では目的原価見積をベンチマークに適合予算設計としている違いがあるとのことである。このような、記述は、たぶん原価の公開性が高い欧米での前提である上での話ではないかと思うのであるが・・いかがであろうか。
さらに、最後に、よくぞ言った決定的ひとこと、「ゼネコンが施工段階で図面を書き直すのは、設計事務所の図面が、まったく信用ならないからである」と!!そのとおり・・・と。
で、ここからは、私の私見ですが、
しかし、3つ見失っていることがあると思います。
- 欧米では専門工事費・下請け費が比較的オープンであるが、日本のゼネコンの設計施工一括請負方式は、原価の実体が、まったく秘密であること。
- 建設工事の価格実体は、国内の囲われた社会経済での価格であり、本当にこれが生産性の高い価格の実態であるかは不明であること。(ならば、建設業だけが、なぜに裏献金の話が、引きも切らずに出てくるのか。)
- 現在の価格が、高い生産性であったとしても、公正なリスク配分、公正な利益分配がなされているのか?という問題が残る。
そもそも、欧米と出発点が違うのだと。
- このセッションを終えて、思うこと。
ある意味で、田部井明さんの「契約形態」の分析と「ゼネコンが施工段階で図面を書き直すのは、設計事務所の図面が、まったく信用ならないからである」という言葉が、BIMの日本での実体を、最も決定付けている言葉だと思う。
つまり、「プロジェクトの全体に渡り合理化を図るシステムを構築する。そのツールとしてBIMの導入」というのが欧米で普及させようとする推進力である。然るに、日本は、プロジェクトの全体に渡り統括的契約をする「ゼネコンの設計施工一括請負方式」が幅を利かせ、ゼネコン内部の生産性をあげるツールとしての現状のBIMの存在が明確になったといえる。大手設計事務所の導入もあるが、現状では、官公庁物件の契約資料の合理化がその主な目的に見える。「平成21年国土交通省告示第15号」の設計料に到底及ばない設計料は、川上である設計でBIM設計という精度の高い・高度な設計手法により、川下の施工の合理化を促し、プロジェクト全体の効率を上げるという手法を、許さないのが現状である。ゆえに、小規模設計事務所のBIM利用は、CG・レンダリング作成と、多少奇抜な形態を追うツールに甘んじているのである。
これが、このセッションを通じ、私の現在の考えである。
しかし、この状態を、打破せねば!!と言い聞かせる僕がいて。・・前へ!と言い聞かせている僕。
BIMの動きに興味が有り最近特に気になっています。
返信削除施工図業務を生業としています。設計段階から参画させていただくと現場が始まってから施工図(二次元)作成、製作図チェックはとても楽です。頭の中でBIMを構築して仕事が出来ますから。関わる人の能力に頼ったものでなく、誰でも構築出来、わかるようにするのがBIMの目的のひとつなのでしょうか。
コメント、ありがとうございます。
返信削除気がつくのが、随分遅れて、すみません。
>>「関わる人の能力に頼ったものでなく、誰でも構築出来、わかるようにするのがBIMの目的のひとつなのでしょうか。」
との事ですが、その通りだと思います。
2次元で設計していたのでは、所詮、設計者の頭の中にある3次元のイメージを、的確に表現しているとはいえません。そこで、2次元の設計図では、間違いだらけの設計となります。設計者も頭の中の3次元イメージなので、的確にそれが構築されているとは限りません。やはり間違いだらけなのです。
それを、PC上で3次元で構築して、共有しようというのが、そもそもの発想だと思います。
ただ、実際に設計をやっていると、課題もあります。設計とは、一気に3次元の完成型になるのではなく、平面図・断面図を考えながら、徐々に最終の3次元モデルが出来上がるものです。基本設計後半から実施設計においては、2次元図面を作成しながら、設備・構造・ディティールが、3次元で徐々に完成してゆくのだと思います。(建築家の巨匠は、一気に全て構築されているものかもしれませんが・・・)
しかし、ここに課題があります。
いままで、2次元から考えていたものを、一気に3次元で書けといわれても、そう簡単に書けるものでは内容に思います。
やってみるとわかるのですが・・2次元のような長年人類(?大げさですが)が、はぐくんできた図面の書き方をすて、新しく書き方を考えるわけですから、それ、相当のストレスがあります。
そこに、スキルの問題、BIM設計マニュアル(2次元の場合は、平立断、詳細、建具、展開などの定番図面があるように)を新たに構築しなければならないという、課題があるように思います。
でも、私の場合、BIM・3次元に慣れてくると、わざわざ平立断、詳細、建具、展開など図面をそれぞれ直すのが馬鹿らしくなって、いまは全部BIM・3次元です。
もし、時間がありましたら、私のHPの下のURLでも見てくださいね。
(参考URL)
http://www.tarch.jp/theory/innovate.html
投稿、ありがとうございます。